Power of Krusugawa

        作:雲流 雪



 プロローグ~藤田浩之 高一の春~

「なあ、雅史」
「なに?」
「この学校の購買部ってさ、なんで、カレーパン無いの?」
「サッカー部の先輩の話だと、去年の春から無くなったんだって」
「だから、なんでだよ」

「ふふふふふ、志保ちゃん情報の出番のようね……。
 なんでも、去年の新入生に辛いものが嫌いな人がいるんだって。
 きっと、そのせいよ」

「あ? なんで、たった一人のために無くなっちまうんだよ」
「鈍いわね~、その人がこの学校を裏から操ってるからに決まって……」
「あほらし。こんな奴ほっといてさっさといくぞ、雅史」


 この時、彼はまだ知らなかった。
 それがあながち間違いとは言えないことに……。



  第1章

 とある昼休み

 女子生徒A「ねえねえ、知ってる?」
 女子生徒B「え? なになに?」
 女子生徒A「最近、昼休みになると人が消えるんだって」
 女子生徒C「あ~、それ、知ってる~。うちのクラスの人も消えたんだよ~」
 女子生徒B「は~?! なにそれ? 消えるってどういう意味?」
 女子生徒A「なんてゆうか~、いわゆる神隠し?」
 女子生徒B「はいはい。それで? 消えちゃった人はどうなったの?   まさか、消えたままじゃないでしょ」
 女子生徒C「それがね、昼休みが終わったころに戻ってきて~、その人に聞いたら~、
        なんでも~、気が付いたら、学校の裏の神社のところにいたんだって」
 女子生徒B「ふ~~ん」
 女子生徒A「も~、全然信じてない。そういう子、他にもいるんだよ。
        あんたも気をつけたほうがいいんじゃない?」
 女子生徒B「ったく、何言ってんだか」


 ところ変わって、ここは中庭

「よっ、セ~ンパイっ。今日もひなたぼっこ?」
「…………」
「そうだよな~。こんな天気のいい日はひなたぼっこに限るよな~。
 なんで、みんな、こんないい穴場に気がつかないんだろ?」
「…………………」
「え? なんか言った? 今、魔法がどうとかって……」
「………………」
「え? 気が付かないからこそ穴場? そっか、そりゃそうだよな~。あはははは」


 彼は、まだ気づいていない。
 まわりに誰もいない理由に……。



  第2章

「ね~、浩之ちゃん」
「おぅ、あかり。なんか用か?」
「よかったら一緒に帰らない?」
「ああ、そうだな。たまには一緒に帰るか」
「えへへ~」
「あ? なんだよ」
「なんでもない。あ、そういえば蛇のこと覚えてる?」
「蛇?」
「そう。川原に遊びに行ったとき蛇がいて、 あたしが泣いちゃったら浩之ちゃんが助けてくれて……」
「そんなことあったか?」
「もお~。すぐ忘れる~。でも浩之ちゃん、よく平気だったね。あの蛇……恐かったよ」
「俺に言わせれば、蛇より熊のほうがよっぽど恐いぞ」
「また、そうゆうこと言う~」
「あー、そういや、最近、蛇見かけねーな」
「そうだね。いざいなくなると寂しいね。やっぱり自然破壊の影響が生態系に……」

 ぺしっ。

「俺の前でそういう話をすんなって」
「うぅ、そ、そんな~」

   てくてくてくてく……

「あ。待ってよ~、浩之ちゃーんっ」


 彼は知らない。
 蛇が苦手なある人物のために、この辺一帯の蛇が駆除されたことを……。



  第3章

「ね~、浩之ちゃん」
「あ? なんだよ」
「今日、変な夢見ちゃった」
「……いちいち、そんなことを報告しなくてよしっ」

 ぺしっ

「なんかね、夢の中に来栖川先輩が出てきたの」
「ほう、俺もだ」
「え? 浩之ちゃんも? どんな夢だった?」
「おぅ。……笑うなよ」
「うん、笑わない」
「先輩がほうきに乗って巨大なクマの怪物を倒す夢」
「ええ?! 浩之ちゃんも!?」
「“も”ってことはあかりも見たのか?」
「う、うん。どうして同じ夢を見たんだろ?」
「う~む……。そうだな~、先輩が魔法でも使ったんじゃないか?」
「うん、そうかもね」


 彼らは知らない。
 この予想が案外、的を得たものだったことに……。
 そして、このことが実際に魔術的世界において行われたということを……。



  第4章

 オカルト研究会部室にて

「……先輩、この高そうな本、なんか妖気がでてない?」
「…………」
「いや、霊視とかそうゆうんじゃなくて、物理的に怪しげな煙のようなものが出てるんだけど・・・・・・」
「……………」
「封印が溶け始めてた? 大丈夫なの?」
「……………」
「あ、その護符を貼ればいいの? 手伝おうか?」
「……………………」
「魔力のない者がこの本を触ると火傷する? そ、それは危ないね……」

「…………」
「終わったのか……。その本っていったいなんなの?」
「…………」
「ネクロノミコンの原本?」
「…………」
「人の頭の皮で作られてる?!」
「…………」
「存在を知ってしまった以上は常に身辺に注意を払ったほうがいいって? そんな……」
「…………」
「え? 来栖川のほうで対魔術結社用のボディーガードをつけるって?
あ、あはははは、そ、それは心強いな~……」
「…………」
「うん、それじゃ、また……」

 彼は知らない。
 その書物の価値を。
 そして、学校や家、通学路の他、彼の身体そのものも強力な結界によって守られていることを……。



  第5章

「なあ、綾香~」
「ん?」
「お前ってアメリカにいたんだよな」
「そうだけど」
「しかも、優等生だったんだよな?」
「まあね」
「今、お前、高2だよな?」
「何が言いたいのよ」
「いや、飛び級しなかったのかな~と思って」
「したわよ」
「え? したのか?」
「ええ、マサチューセッツ大学の大学院のロボット工学科卒業したから、博士なのよね~、あたし」
「…………」
「どうかした?」
「いや、お前ってすごい奴だよな」
「そんなことないわよ。アメリカには12才で大学卒業した人もいるんだから」
「そうゆう奴らと比べることが出来るだけでも充分すごいとおもうがな」


 彼は知らない。
 彼女の卒論がHMX-12、13の「ココロ」の基礎理論となったことを。
 彼女の肩書きは女子高生、エクストリームのチャンプだけにとどまらないことを。
 



 終章

「よっ、セ~ンパイっ。光合成、はかどってる?」
「…………?」
「え? ああ、冗談、冗談……」
「…………………」
「先輩の冗談か……。ちょっと聞いてみたい気もするな」
「……。………………」
「うん、まあ、期待して待ってるよ」


 彼は、知らない。
 この発言が後に学校中を巻きこむ騒動に発展することを・・・・・・。

 もっとも、こればかりは知らなくても仕方がないか……。







後書き

 拙い文でごめんなさい。
 なんかこう、自分が表現したかったものをうまく表現できませんでした。
 まあ、精進して行くつもりです。
 あ、一応、来栖川先輩誕生日記念SSのつもりだったりします。


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