クリスマス・イヴ
作:雲流 雪
はあ~、世間はクリスマス1色か……。
ま、野郎一人でクリスマスを過ごすのは今に始まったことじゃないしな。
クリスマスなんて、俺にとっては普通の日と一緒だ。
例えば、10月9日とかな……。
大体、何で俺がキリスト教徒でもないのに、キリストの誕生日を祝わねばならんのだ。
それにキリストが生まれたのは紀元マイナス4年の10月頃だとか言うじゃないか。
どうなんだ? そこんとこ?
……やめよう。
余計に空しくなるだけだ。
そういや、去年も似たようなことを考えていた気がする。
たしか、この後に……。
「浮かない顔をしてどうしたのだ、まい同志」
そうだった。大志の奴が来たんだった。
って、おい。
「どっから湧いてきたんだ?」
鍵は閉めたはずだが……。それに、ベランダも。
「ふっ、この部屋には次元の裂け目があるのでな。出入りするのはたやすいことよ」
「んなもん、あるわけねえし、あったとしても出入りできるかっ」
「何を言う、ゴキブリに出来て吾輩にできぬはずなかろう」
頭が痛くなってきた。
「…………」
「疑っておるな、まい兄弟。仕方ない、世界の秘密を教えてやろう」
疑うとか疑わないとかそういう次元を超えているんだがな……。
「ゴキブリだけでなく昆虫は、人類が魚類だったころから地上を闊歩していたのは知っているな?
奴ら昆虫類は、異なる宇宙からやってきた遥か昔の地球の支配者<古き者>が連れてきた
異宇宙の生物の生き残りだ」
「あのな~、電波を発信するのはやめろって」
尊き「言論の自由」のお陰で逮捕はされんだろうが、世の中にはある種の「病院」というものが
あるからな……。
「真実は常に隠蔽されているものだ。このことを聞いたからには身の回りには充分注意を払うことだ。
とくに特殊警察には気をつけろ。奴らは手強いぞ」
……もはや、俺の手にはおえん。
「ったく、せっかくのクリスマスが……」
「なにか、予定があったというでもいうのかな? 吾輩には全てお見通しだぞ、まいふれんど。
さあ、今宵は存分に主たる者の誕生を祝おうではないか」
「は? お前、キリスト教だったのか?」
「なに寝ぼけたことを言っているのだ。吾輩の誕生日を忘れたか?」
野郎の誕生日なんて覚えているはずないだろうが……。
「ああ」
「くっ、何たることだ。それでも我が同志か? 吾輩の誕生日は明日。クリスマスだ。
世界中の人々が後の世界の支配者にならん吾輩の誕生を祝っているというのに……」
こ、こいつは~。
「違うだろ。世界中の人が祝っているのはイエス・キリストのほうだ」
「ふっ、吾輩こそ、イエスの生まれ変わり。誕生日が一緒なのがその何よりの証拠。
さあ、吾輩と共に夢の千年王国を築こうではないかっ、まいえたーなるふれんど」
「お前はアホか~~~!!」
誕生日がクリスマスなんて、ちょっと珍しいかもしれんが、所詮、確率は365分の1。
世界に五万といるだろう。いや、実際、5万程度じゃ済まないだろう……。
「おっと、どうやら長居をしてしまったようだ。妹に怒られてしまう。
早くケーキを買って帰らねば。さらばだ、まい同志」
え? 今、なんて……?
「お、お前、妹なんていたのか?」
「それは日本の最重要機密事項だ。おいそれと話すわけにはいかんな。
春になれば判るやも知れぬ、とだけ言っておこう」
「おい、ちょっと、待て……」
あ。
ベランダに出て、飛び降りやがった。ここは1階じゃないんだが……。
……大志なら、心配する必要もないか。
「ぐおおーーー。なに?! ぐわあああ……。くぅ、さては、アメ○カの陰謀だな。なっ……?」
……今、地面に落ちたところをバイクにはねられ、そのまま空中で大型トラックに突っ込まれた
時に出すような悲鳴が聞こえてきたが、気のせいだろう……。
疲れてるのかもな。
次こみパの原稿、昨日できたばかりだし。
今日はもう寝て、嫌なことや変なことは忘れてしまおう……。
はっぴーえんど。